心にしみる物語『猫と竜』

2019年6月22日

書籍情報

・タイトル:『猫と竜』
・漫画:佐々木泉、原作:アマラ、キャラクター原案:大熊まい
・出版社名:宝島社(このマンガがすごい!comics)
・発行年:2018/02/03
・本のサイズ:B6判(横128×縦182×厚さ15mm)
・分類:コミック
・総ページ数:190ページ
・定価:本体690円+税

概要

web発小説をコミカライズした本作。私はよく小説原作のマンガを読むんですが、原作も読みたいと強く思う作品というのはそれほど多くありません。
この作品も原作は未読ですが、このマンガを読み、原作ではどのように描かれているのか、読んでみたいと強く思いました。
物語の舞台は魔法が存在する世界。王国があり、人里離れた森には竜や魔法が使える猫が住んでいる、まさにファンタジーの世界です。
が、よくある剣と魔法の冒険ファンタジーではありません。魔法が使える猫に育てられた竜と、その竜が見守る猫たちと人との交流が、時には滑稽に、時には切なく、温かく描かれています。
1話35~40ページで、第5話まで収録。話によって主役が変わります。

オススメポイント

オススメポイント1!

イクメンならぬ、イクリュウ

猫は言わずもがなですが、なんと言ってもこの竜が良いキャラクターをしているんです!
前項でも触れたように、話によって主役が変わる本作。竜は第1話、第3話がメイン回となっています。
第1話では、1匹の猫とある国の王子のお話を軸にしながら、今後の物語の重要な核となる竜の過去が語られます。猫と竜の関係性だけでなく、人が猫たちをどう扱っていたのか、そのとき竜はどのような行動を取ったのか、回想という形で描かれます。
第1話冒頭の、猫と王子の魔法練習の様子がほのぼのとしていたので、すっかり油断していました。回想であんなに胸が痛くなるなんて。
ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、竜が森の猫のことをどれほど大切に思っているのか、すごく伝わってきました。
この回想で、一気に竜のファンと化した私。
第3話は終始ニヤニヤしながら読んでいたと思います。
第3話は森の中が舞台。町で暮らしていた猫や違う森で生活していた猫が子育てのため竜の元に里帰りし、子育てをするお話です。子育てに竜も参加します。というより、魔法の使い方や危険なことなどの常識は竜が子猫達に教え授けます。
そう、この竜は見た目に反してすごく優しく面倒見が良いのです!
竜の言葉遣いが、どこかの王族の偉いおじさん風なことも相まって子猫とか嫌いそうな雰囲気を醸し出しているのですが、そんなことは全くありません。
竜の爪にじゃれてくる子猫が出てくるのですが、とても嬉しそうに遊んであげるのです。
竜は猫に変化することもできるのですが、その姿のときに子猫たちが大勢でじゃれついてきて、話の腰を折られたとしても怒ることはありません。
ある程度じゃれつかせてから、話を続けても良いか尋ねるのです。
その時の竜の格好いいこと、格好いいこと。
イクメンならぬイクリュウですね!
(※育児を積極的に行う竜のことです)
彼が今後どんな猫とどう過ごしていくのか、次巻を楽しみにしています。

オススメポイント2!

個性豊かな森の猫たち

本作にはたくさんの猫が出てきます。
猫といってもただの猫ではなく、森に住む魔法が使える猫たちです。人は彼らをケットシーと呼んでいます。
1話から5話の中で最も印象的だった子は誰だったかと聞かれたら、私は2話の主役である竜を育てた母猫を挙げます。
1話目で、竜を自分の子ども(子猫)と一緒に育てていることから、大らかな性格であろうことが推察できますが、2話目でそんな大らかなんて性格ではないと判明します。
なんと母猫は、突然魔法学校に通う気弱な少女に召喚され、使役されることになったにも関わらず、召喚した少女を一人前の魔女に育てようとするのです!
肝が据わっているというか、なんというか、たくましいですよね。
第2話を読み終えて最初に思ったことが、(母猫、最強・・・!)でした。
たぶん、読んだ方には言いたいことが伝わっているんじゃないかと思います。
どの世界、どの時代、どの種族でも、母というものは偉大なんだなと改めて思い知らされました。
この母猫がメインの話は本作では第2話のみでしたが、今度、出てくることはあるのでしょうか。
個人的に好きなので、ぜひ過去の子育てエピソードなど読んでみたいと思いました。

まとめ

猫と竜がとても愛おしい一冊でした。
帯に書かれた「心に染みいる優しい魔法。」の文言に、分かる~、と頷いてしまいました。
それくらい心に響いた一冊です。
近頃、ファンタジーマンガでも殺伐とした内容が多い気がするのですが、こういう本がもっと増えれば良いのになぁと思います。
次巻ではどんな猫たちに出会えるのか、楽しみです。